伊豆大島にケーナは響く
ろんがあは吹く楽器が好きである。
いちばん好きなのはソプラノサックスで、かれこれ10年以上前から吹き始めた。
いかんせん独学なのと、週末にしか音出しができないので、
いまだ初級者の域を脱せないでいるが。
少し前に映画「スイングガールズ」がヒットして、
世のお父さん方の一部で管楽器ブームが起こっていた。
このときは「オオ!貴方も始めましたか、がんばんなさいね!!」と、
ちょっと先輩面をして好ましく眺めていたものだ。
しかし、当時勇気ある一歩を踏み出し、楽器屋さんで初めてサックスを手にした方も、
今では押し入れの肥やしにしてしまっているという人が少なくないだろう。
というのも、サックスなどの吹奏楽器は音がでかいので、
住宅地の小さな一戸建(ウチのような)では夜になって音出しするなんてもってのほか。
吹けるとしたら休日の昼間、ご近所になるべく音が漏れないように。
情熱のある人は練習場所を求めてカラオケボックス通い‥‥という感じなので
思うように練習できず、練習できないと上達できず、
いつか押し入れに入りっぱなしになりがちなのだ。
しかし、休日に屋外で思い切り音を出すのは気持ちいい。
遠くまで響いた自分の音が跳ね返ってきて、こだまするのはなかなかの快感だ。
これを大自然の中、キャンプでも楽しめたら‥‥というのは貸し切り状態のキャンプ場でない限り難しいだろうなあ。
そこでろんがあは考えた。
●音量は大きすぎず
●コンパクトで持ち運びが便利で
●デリケートすぎず屋外でも使える
そんな「吹く楽器」を試してみようと。
まず、最初に入手したのがケーナ。南米のインディオの使う縦笛だ。
「コンドルは飛んでいく」で使われているといえばおわかりだろう。
素材は南米の葦、竹、木、牛骨製で、濡らしたりショックを与えたりするのはタブーだが扱いはさほど神経質になる必要はないようだ。
大きさは直径約3センチ、長さも40センチ足らずだから持ち運びは抜群だ。
竹製の入門用なら3千円くらいからある。1万円も出せばそこそこのものが手に入る。
吹き方は日本の尺八とほぼ同様で、音を出すまでやや練習が必要だ。
最初は息が音にならず、苦戦するかもしれない。
だが息の太さや方向、スピードを少しずつ変えていき、
鳴るポイントがつかめれば、音は出るようになる。
いい音が出せた時はそれだけでも快感がある。哀愁のあるいい音色だ。
運指はリコーダーに近く、ドレミの音階は勿論、シャープやフラットも出せる。
(上手ければ(^^;)
シンプルな曲なら比較的簡単にマスターできるだろう。
実は前記事の「楽園キャンプ場」で紹介したトウシキキャンプ場に
安い竹製のものを持っていったのだが、
誰もいないキャンプ場でロングトーンの練習(単音を長くのばして吹いて、きれいな音色を出す練習)をしていると、高音域が思いのほか響き渡った。
日本の篠笛や尺八とも通じる侘び寂び、
それでいてアンデスの高原を吹き渡る風のように独特の寂寥感を湛えた音色が、
伊豆大島の亜熱帯を思わせるような密林の上に‥‥
なんていうのは大げさだが、とにかく気持ちいい音で鳴ったわけだ。
気持ちよかった反面、他にキャンパーがいたら顰蹙かもしれないなとも思った。
下手さ加減で迷惑になることは勿論なのだが、
山に反響している感覚があるくらい、音も思ったより遠くまで飛ぶのだ。
夜に吹いたら「うるさい!」と文句が出ることだろう。
でも、その分快感も大きいのだから困る。
誰にもうるさがられず、むしろよろこんで聞いてもらえるような腕前になれば
何の問題もないのだが、それがいちばん難しい。
ほかにもオカリナや篠笛、ハーモニカなど、ちょっとずつ紹介していきたいと思う。
(つづく)
ランキングを試しています。よろしければ1クリックどうぞ。
関連記事